AI Adoption Guide

生成AIの利用率をどう読むか

日本企業の現状と、利用率の次に見る指標

生成AIの利用率は、導入の段階で確かめる指標です。 利用率が上がっても、業務の手順が変わらなければ、成果は数値に表れません。

本稿では、公的な調査で日本企業の利用率を確認したうえで、利用率の定義が会社ごとに違うこと、利用率だけを追うと起きること、フェーズごとに主な指標を切り替える考え方、業務単位で効果を測る方法の順に述べます。

最終更新:2026年9月22日

01

Usage Rates

日本企業の生成AI利用率

日本企業の生成AI利用率は、調査によって大きく異なります。調べている企業の範囲と、「利用」の数え方が違うためです。代表的な3つの調査を並べます。

総務省の調査:1つ以上の業務で利用している企業の割合

総務省の令和8年版情報通信白書(2026年7月)によると、生成AIを1つ以上の業務で利用している日本企業の割合は86.4%でした。2024年度の調査の55.2%から大きく上がり、米国(90.9%)、ドイツ(91.6%)、中国(98.1%)との差も縮まっています。

生成AIを1つ以上の業務で利用している企業の割合(総務省『令和8年版 情報通信白書』)

日本

86.4%

米国

90.9%

ドイツ

91.6%

中国

98.1%

日本(2024年度の調査)

55.2%

帝国データバンクの調査:活用している企業の割合

帝国データバンクの調査(2026年3月、有効回答10,312社)では、生成AIを「活用している」企業は34.5%でした。規模別では、大企業が46.5%、中小企業が32.4%、小規模企業が28.0%で、規模が小さいほど低くなっています。

PwCの調査:活用・推進している企業の割合

PwCの調査(2026年春、売上高500億円以上の企業の課長職以上が回答)では、生成AIを活用・推進している日本企業は87%で、他の5か国(89〜93%)と大きな差はありませんでした。

3つの調査の数値は、直接には比べられません。対象とする企業の範囲、回答者、「利用」の定義がそれぞれ違うためです。企業の導入率、社員の利用率、月に1回以上使う人の割合は、それぞれ別の指標です。

出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月。企業向け調査は2026年1〜2月、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上)/帝国データバンク『生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)』(有効回答10,312社)/PwC『生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較』(調査期間2026年2月12〜19日、売上高500億円以上の企業の課長職以上、日本932名)

02

Definition

利用率の定義は会社ごとに違う

企業が公表する利用率も、定義と計測期間がそろっていません。公開されている例を並べます。

パナソニック コネクト:月間利用率61%(2025年度。導入から約3年)

コロプラ:全社員のAI活用率約98%(2026年6月時点)。一定期間内に、社内で利用できるAIツールを業務で使った社員の割合として算出

日立製作所 北海道支社:約1年で、支社の生成AI業務活用率100%

月に1回使えば利用とみなすのか、業務で使った人を数えるのか、対象を全社にするのか支社にするのかで、同じ「利用率」でも意味が変わります。他社の数値と比べる前に、自社の定義と計測期間を先に決め、同じ定義で推移を見ます。

公表値は目標を設定する際の参考になりますが、共通の合格基準ではありません。

03

Pitfalls

利用率だけを追うと起きること

利用率は、ツールを使い始めた人がどれだけいるかを示します。業務のやり方がどれだけ変わったかは示しません。

総務省の同じ調査では、議事録・メール作成の補助に生成AIを使っている企業は、合わせて71.2%でした。内訳は、「従業員が個人作業の効率化で活用している」が35.2%、「部署内の特定業務で活用している」が24.7%、「業務プロセスがAI中心に変更されている」が11.3%です。最も利用が進んでいる業務でも、多くは個人の効率化にとどまっています。

議事録・メール作成補助での生成AIの活用状況(総務省『令和8年版 情報通信白書』)

個人作業の効率化で活用

35.2%

部署内の特定業務で活用

24.7%

業務プロセスがAI中心に変更

11.3%

組織としての取り組みにも差があります。生成AIによる業務の変革などについて「組織的な取り組みはない」と答えた企業は、日本が27.0%で、米国の1.4%、ドイツの4.9%、中国の2.6%を大きく上回りました。日本の企業規模別では、大企業が18.1%、中小企業が45.6%です。

出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月。企業向け調査は2026年1〜2月、従業員10名以上でデジタル化に取り組む企業の管理職以上)(図表Ⅰ-2-1-7)/総務省『令和8年版 情報通信白書』「組織的な取組状況」(図表Ⅰ-2-1-3)

利用率が高くても、業務の手順に組み込まれていない使い方は、物珍しさが消えた時点で続かなくなり、成果も数値に表れません。個人が使うことと、業務の手順に組み込むことは、分けて数えます。 利用率は前者の指標で、後者の成果として報告するものではありません。

04

Metrics by Phase

フェーズごとに主な指標を切り替える

本ガイドでは、生成AIの社内浸透・定着を導入・活用・浸透・定着の4つのフェーズで整理しています(4つのフェーズと移行の判断)。主に見る指標は、フェーズが進むごとに切り替えます。

フェーズ

主な確認指標

この指標で確かめること

導入

主な確認指標

利用開始率/ルール理解度

この指標で確かめること

対象者が使い始め、基本のルールを理解しているか

活用

主な確認指標

効果を確かめた業務の数/時間・品質の改善

この指標で確かめること

対象業務で、時間と品質の改善が確かめられたか

浸透

主な確認指標

業務組込率/展開先での効果の再現

この指標で確かめること

標準の手順に組み込まれ、別の担当者や他の部門でも同じ効果が出ているか

定着

主な確認指標

効果の継続状況/改善の実施状況

この指標で確かめること

効果が続き、改善が定期的に行われているか

導入の指標を、その後も主な指標として持ち続けないことが要点です。 利用率は導入の立ち上がりを確かめるのに使い、活用からは効果を確かめた業務の数に、浸透からは業務組込率に、主な指標を移します。

業務組込率は、AIを使う前提で標準手順が書き換わった業務の割合です。分母は、事前に決めた対象業務の数とします。分母を後から変えると、推移を比べられなくなります。

Download

現在地セルフチェック(4つのフェーズ×6領域)

24項目に答えると、6つの領域のうち最も遅れている領域から、いまのフェーズと次に着手する打ち手の候補が分かります。Excelで無料配布しています。

セルフチェックをダウンロード

05

Measurement

効果は業務単位で測る

効果は、全業務ではなく、対象業務を数件に絞って測ります。全業務を測ろうとすると計測そのものが負担になり、続きません。次は測り方の設計例で、期間や件数は自社の業務に合わせて調整します。

1

対象業務を数件に絞る

定型の作業が多く、所要時間と品質を記録しやすい業務から選びます。

2

実施前2週間と習熟後2週間の所要時間を比べる

習熟中の期間は、教育や確認にかかる負担と品質を別に記録し、定常時の効果と分けて扱います。

3

品質は上長が確かめる

時間だけが短くなり品質が落ちる状態を防ぐため、成果物の品質を上長が評価します。

4

時間・品質・事業の成果から指標を選ぶ

業務の再設計の件数は、成果に向けた進み具合の指標として併用します。

業務単位の効果は、会社の目標までつなげて説明します。AnchorXでは、指標を経営KPI/事業KPI/サービスKPIの3つの階層で整理しています。階層の考え方は、個別のAI案件の評価について書いたPoCの評価項目をどう決めるかで解説しています。

公開事例では、日立製作所 北海道支社が、契約書の作成・交渉支援が半日〜1日から約10分に、100市町村分の入札情報の収集が約33.3時間から約1時間になったと、業務ごとに計測しています。

06

Summary

まとめ

生成AIの利用率は、導入の段階で確かめる指標です

日本企業の利用率は、総務省の調査で86.4%、帝国データバンクの調査で34.5%と、対象と定義によって大きく異なります

企業が公表する利用率も、定義と計測期間が違います。自社の定義を先に決め、同じ定義で推移を見ます

個人が使うことと、業務の手順に組み込むことは、分けて数えます

主な指標は、導入では利用開始率、活用では効果を確かめた業務の数、浸透では業務組込率、定着では効果の継続状況へと切り替えます

効果は、対象業務を数件に絞り、実施前と習熟後の所要時間と品質で測ります

4つのフェーズの全体像は生成AIの社内浸透・定着で、個別の疑問への短い回答は生成AIの浸透・定着 よくある質問にまとめています。

Free Assessment

自社の現在地を無料で診断する

4つのフェーズと6つの領域から、いまどのフェーズにいて、次に何をそろえるかを整理します。AI浸透・定着支援のページ(ai.anchorx.co.jp)が別タブで開きます。

無料診断のページへ

導入

活用

浸透

定着

Download

生成AIを社内に浸透させる実践例(全文)

本ガイドの元資料です。目指したい5つの状態、6つの課題、10の打ち手、着手の順序、国内外13社の実例をまとめています。PDFで無料配布しています。

資料をダウンロード